ザ・賛否両論
Take A Step Forward
Artist:TAG feat. Sydney Powers
BPM 145
【SP】習2 / 楽7 / 踊9 / 激11 / 鬼15
【DP】楽6 / 踊10 / 激12 / 鬼15
「踏みにくい」
「わけわからん」
「DSPの良さはどうした」
そんな声が聞こえてきそうだけどいったん無視。前回のUNBELIEVABLE(Sparky remix)に引き続きバージョンX3vs2ndMIXからの選出です。
改めて情報を整理してみよう。
BPM145、ノーツ数311。停止や速度変化のギミックもなく、BPMが高いわけでも曲の尺が長いわけでもなく、グルーヴレーダーの一部が著しく尖っているわけでもなく、見た目で明らかにわかる派手な局所難配置もなく、終始4分・8分ノーツのみで構成されている。
これだけの情報では平々凡々、無難な譜面しか思い浮かべられなくとも無理はない。そんな譜面のどこにロマンが存在するというのか。我々はX3vs2ndMIXフォルダの奥地へと向かった。
交互難
というのも、この譜面については簡潔に説明するなら『交互難』の三文字に尽きます。
そして、作譜者の意図を汲むかどうかの是非が評価のポイント。プレバトの俳句特待生試験か。
とりあえず「交互踏み」前提で見てみよう。
ハイ、出だしの配置。セオリー通りに踏み始めると最後のほうで「?」となりますね。まだノーツ置かれて2小節ですぞ。はえーよ。2小節ぐらい交互に踏ませてよ。
えー、交互に踏むひとつの方法としては、この5歩目1P→、これを直前の4歩目1P→を踏んだ右足そのままではなく、左足に入れ替えるといい感じです。こういったパターンの際に足を入れ替えるクセがついているプレイヤーは特に引っかからないと思いますが、どちらかといえば少数派のような。
ボーカルが歌い出す前からもう踏みづらいとは何事か…と言いたいところですが、X3フォルダのDP譜面ではよくある現象なので、こんなところでストレスを感じていたら曲が終わる頃には毛量がCHAOS習CUT1のノーツ数と同じになってしまいます。落ち着いていきましょう。
最初に述べた通りこれは交互難カテゴリの譜面。
スライドせず踏むためには、見たまま踏むだけではなく技術面でのプラスワンアクション、つまり逆足入り・ボックス・スイッチ・270度捻り(半回転)などあらゆる足運びを駆使して挑まねばなりません。(空打ちが使えるとかなりラクですが交互踏みにカウントしていいのかわからないので一旦置いときます)ゆえに「足12でもそこそこAA+が取れるようになってきたぞ!」「DPっぽい動きができるようになってきたぞ!」と意気込んで挑戦しに来た、主にノンバースタイルプレイヤーのハートをボッキャボキャにへし折る譜面として名を馳せており、……え?Sacred OathのDP? あれは激も鬼もハートどころか足首まで折れるのでマジで気をつけたほうがいいよ。
そんなこんなで、この譜面を初見プレーで『うわ~!すっごくおもしろ~い!』と心の底から満喫できる人はそうそういないはず。いてたまるか。大半のプレイヤーにとっては「踏みにくい」「わけわからん」「DSPの良さはどうした」ぐらいの認識に落ち着くのが現実的なところでしょう。
交互に見せかけた思わせぶり配置
いや……これはちょっと理想の認識ですねすみません。訂正します。
リアルな感想はたぶん「は?まあ8分だしBPM遅いしスライドでいいか」だと思います。『出来るようになったら楽しいよ』と吹聴するにはあまりにもターゲット層が狭すぎる。SuperNOVA2のMARVELOUS判定にも引けを取らない狭さだ!無慈悲ィーッ!!(近くで旧作稼働してる人はぜひ遊んでみてね)
正解の有無
『交互難』属性として扱われる譜面はいろいろありますが、みなさんはもしも交互難譜面をさらに細かく分類していくとしたら、どんなカテゴリへと切り分けていきますか?
ちなみに自分は
『踏み方に正解が存在する交互難』
『特にこれといった正解が存在しない交互難』
の二通りに分けられるかなと考えています。
これは「交互に踏むこと」を前提としたあくまで自分目線の定義かつ超絶ニュアンスの話なので説明が困難なので読み飛ばしていただいても構いません。
A『踏み方に正解が存在する交互難』
・特定の踏み捌き方を想定した配置
・認識さえできればきちんと交互に踏める配置
B『特に正解が存在しない交互難』
・スライドが前提と思われる配置
・要所に回転・半回転配置を含むもの
(回転配置自体が回転・逆足・ボックスなど
いろんな踏み方で捌ける特性であるため)
初期のバージョン1st~3rd頃までのDP譜面は既に削除済みのものを含め、基本的に遠配置、かつ1Pと2Pを繋ぐ流れがそれほど熟考されていないものも多く、踏み終わった足がそのまま次の入り足になっているパターンも普通にあります。
ただしLa Senorita(EDP13)のように『ハイスピオプションすらない時代にこれが!?』みたいな譜面も存在するので奥が深いですね。
A『踏み方に正解が存在する交互難』
特定の踏み捌き方を想定した配置の例その1
FIRE FIRE(EDP13)
序盤・終盤に出てくるこの縦連はスイッチすることでその後の流れを交互で取れるようになります。逆に言うとスイッチせず縦連をそのまま同じ足で取るとトラボルタ&回転配置になるため、回転にしろ同時スイッチにしろ瞬時に行うにはやや難しく、あまり現実的ではありません。このように、縦2連でのスイッチを前提としている交互踏み配置は、ラキラキ(EDP13)の終盤などにも出てきます。
特定の踏み捌き方を想定した配置の例その2
BRILLIANT 2U (Orchestra-Groove)(CDP12)
通称:鰤桶。
8分滝の1歩目を逆足で(上の図だと○部分の1P←は右足から、2P→は左足から、そして1P→を左足から…etc)入ることにより、交互踏みが可能です。
最初は縦連からはじまるんですが、右足でスタートしスイッチせずそのまま踏んでいけば……
▲1P←の3連を右足で踏めば↓↑同時を内向きに踏むことになり、一応逆足入りにつながりやすい……かも
1P←の3連を捻ったまま右足で踏めるかと言われたらちょっとハードル高め?
↓↑同時のとき↓パネルには右足が乗っていて身体が内向きになっていれば正解かな。そこから1P←に右足を動かせるのかどうかって話ですよね。ムズ。同じ右足入りでも体が外側向いてると踏めないし。モニターが正面にある以上どうしても前向いてないと不安になるのでうっかり正面向く体勢をとっちゃうのが人間のサガ。見てわかってても実際やるとテンパるんだこういうの。楽しいな、DDRは……
曲のパートごとにある程度法則性のある配置が割り振られており、綿密に足運びを想定して作られたものと思われます。まさにCHALLENGE譜面のコンセプトにふさわしい一品。
特定の踏み捌き方を想定した配置の例その3
Somehow You Found Me(EDP13)
イントロ・アウトロ部分の同時配置がポイント。
正面を向いてそのまま踏むと足の置き方は上記のように(L=左足、R=右足)なりますが、これだとその後の流れで足がもつれる。回れたらカッコイイけど、さてどうしたもんか。
ではこちら同じ配置ですが2回目の同時に注目。
このとき捻った体勢になっているわけですが、直後の1P←を右足で踏み始めることになり、たったこれだけでその後の流れを交互に取ることができます。この配置すごくない!?
序盤のジのとこぐらいしか紹介してませんが、この同時はイントロのみならずアウトロでもしっかり出てくるので、覚えておくと楽しいです。流れの途中に配置された同時は軸足のリセットや入り足のリードまたはミスリード要因になっていることが多いですが、これは同時配置そのものを交互踏みの流れに組み込んでいるところが味わい深いポイント。
特定の踏み捌き方を想定した配置の例その4
魔理沙は大変なものを盗んでいきました(EDP12)
なんかゲシュタルト崩壊しそう。こちらの交互難はDPの交互踏みパターンの中でもハイレベルな譜面認識力が問われます。超ざっくり言うならホームポジションを跨いでアフロ踏みをするような形。ちなみにこれといった通称が安定しておらず『中央交互難』『6パネ交互難』『変則アフロ踏み』などさまざまな呼称を見かけます。これからのDP譜面において恒常化していきそうな予感。
※かくいう自分もこの配置いまだ踏み損ねまくるのであまり大きな声で解説できません。不甲斐ないですがあくまでこういうのもあるよということでご勘弁を。一部ですが、12以上だとShe is my wife(EDP12)Eternal Summer(EDP13)POSSESSION(DDP14)Helios(EDP16)などに出てきます(下位譜面だと華爛漫(DDP7)に一瞬それらしい配置あり)
その他DP特有の認識力が必要となる配置はいろいろありますが(交差・遠ビジ・6パネ系など)例が無限にあるので割愛します。近年の譜面はちょっと複雑な交差渡りがトレンドのようで、A3稼働時から収録されているBeluga(EDP11)やWolf's Rain(DDP11)あとはMess With My Emotion(EDP12)DOUBLE TORNARD(DDP12)など、パック特典だった過去CS楽曲の足12周辺でもよく目撃しますね!
B『特に正解が存在しない交互難』
スライドが前提と思われる配置の例
in the past(DDP12)
自分の脳みそでは強制スライド仕様としか思えない配置なんですよね。○つけたとこでスライドするとおおよそ正面向いたまま捌けるはず。ボックスで取ると直後の配置がこれまた難しくなるのでコレジャナイ感。
なんといっても該当箇所までは交互に踏める流れであることが混乱の要因。小節の頭に交互難配置が訪れるので何かしら意図はありそうな気もしますが、作者そこまで考えてないと思うよ案件かもしれません。こうじゃないか?という見解があればこっそり教えてほしい。
……おそらく先に例として出すべきはHealing Vision~Angelic mix~(ESP13・EDP14)なのですが、背面プレーできる人を目撃したことがあるので感覚がバグっています。
※Youtubeへのリンク
要所に回転・半回転配置を含む配置の例も多いので割愛。もちろん本項で解説しているTake A Step Forward(EDP12)をはじめ、X3vs2ndMIXシリーズのフォルダはなかなかに交互難傾向が強いです。序盤から半回転まみれのHaunted Rhapsody(EDP13)やスライドすると終わるUntil The End(EDP13)フリーズアロー絡みの配置が肝となる問題児・Rescue me(EDP13)など粒ぞろい。
ONLY ONE
DDRにおけるスコアの評価は、ノーツを正確なタイミングで踏めたかどうか、ただそれだけ。
そう、DDRは今のところ──新作が発表されたけど少なくともA3時点では、キャラにスキルが備わっているタイプの音ゲーでもないし、当然スコアを強化する装備やアイテムもない。回転しようがステルスで踏もうが8倍速でフルコンしようが音ゲー用語でいうところの理論値は等しく100万点であり、100万8000点とかになることはありません。だからこそ人それぞれ好きなスタイルでプレーすることが出来るわけですね。
Take A Step Forwardの話に戻ります。
レベル12、ソフランもせずこのBPMで4分・8分しかないということは、つまり交互だのなんだのを重視しなければスコアを高めること自体はさほど難しくない(※理論上)ということでもあります。むしろそういった攻略も出来るようにあえて4分・8分のみの配置を徹底しているのではないかとすら勘繰るほどに。
ボーカル合わせでわりと素直に踏めるDSPに対し、ボーカル合わせではあるものの終始EDPと同じく交互難の片鱗が見えるDDP(≒ダブルを遊ぶならこれぐらいはできるよなという小手調べ感)そして問題のザ・交互難なEDP……
作曲者は、言わずもがなBEMANIで数々の功績を残したTAG氏。出来る範囲でサルベージしたところ明確な言及は得られていないのであくまで想像ですが、もともと本人がディープなDDRプレイヤーだった経歴や数多の譜面作成も行っていた背景、そして彼の曲の譜面に頻出するややテクニカルな配置のことを考えると、私はこの曲の譜面もきっと彼が手掛けたのではないかと思っております。初出が海外のCS版なので自信はないけど、可能性としてはあり得るはず。
ちなみに当時本人から寄せられていた
本曲へのコメントがこちら。
『自信を持って一歩前に踏み出せ!というポジティブなメッセージを込めております。是非踊ってみてくださいね!』そのわりにはムズいぞ!
───この楽曲は、他の何でもなくDDRのために書かれたものだそう。
グッと感情を揺さぶるボーカル、ダンスフロアでも映える力強いピアノサウンド。歌詞に込められたメッセージ性。拾おうと思えば拾える音や要素はいくらでもある、そんな緻密にデザインされた楽曲のDIFFICULTならまだしもEXPERT譜面を作ろうってときに『徹底して4分・8分で完結させる』って、改めて考えたらものすごく攻めているんじゃないか?
幾通りある可能性の中から選ばれた4分・8分の玄人向け配置という選択肢。素直な配置ならまだしも素直のスの字もない配置、ESPに関してはSHUFFLEのほうが踏みやすい説さえある。適当に配置したとは言い難いのにどこまでが意図されているのかよくわからない譜面。どこのギアをどう入れたらこうなるのか。この楽曲を聴いてヨーシじゃあ譜面作ろう!できた!交互難8分!って人、ヤバいだろ普通に。そんなことができるとしたら心当たりがあるのは………
……いや、そう思いたいのかもしれません。
ここまで言っといて譜面作ってなかったら本当にショックアロー土下座ものなんですが(適当な言葉を作るな)でももし本当にそうなんだとしたら伝えたい。
この譜面へ一歩踏み出した結果、DDRのDPがものすごく楽しめるようになったプレイヤーが……少なくともここに一人いるということを!!
ロマンはどこに
ベストオブロマン配置を選出しようとしたけど、これ全体的に難解ゆえ見せ場っぽい見せ場はなくトータルでぼんやり好きなんですよね。でもあえて言うならここですね。ここ。
最後のサビに入るときのこの遠配置。
2P↓から1P↑へしれっと大移動。
ここをピョイーンと踏むのが好きです。はい。
めっちゃ地味だけどここが好きです。
これくらいの難易度帯における「楽しい譜面」「面白い譜面」はプレースタイルにあまり左右されず共感を得られそうなもんだけど、Take A Step Forward EDPはスーパー賛否両論譜面。傑作だと繰り返し踏みしめる人がいる一方、つまらない人にとっては永劫つまらない。この譜面はそういうポジション。
DDRのどんな部分に楽しさを見出しているかが分かれ道となり、個々のプレースタイルによって見え方・捉え方・評価が異なってくる不思議な譜面。正解がない、つまりそれは自由を意味する。捻りまくる、回転する、空打ち、全スライド、他諸々……真面目にプレゼンするなら「攻略ルートが多い譜面」とかですかね。いや無理あるか。
うーん、踏みにくっ!(間奏)
こんな配置どう考えたって賛否両論を予測出来ただろうに、作譜者はこの譜面を世に出すと貫いた。そりゃあもうロマンでしかない。
ぶっちゃけノンバースタイルをメインとするプレイヤーのそのさらに一部以外から褒め言葉かけられてるの見たことないです!配置から溢れ出る雰囲気があまりにもCHALLENGEすぎるせいだぞ!おかげで追加されたCHALLENGE譜面が無難に見えすぎてEXPERTのヤバさ際立っちゃったよ!退社後強まる念か!
以上、独立不羈の足運びエキシビジョンマッチ譜面を紹介させていただきました。いや紹介っていうかただただ超解釈乙をひけらかしただけ。
えー、自分はこの譜面大好きです。ではまた。