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アンコールエクストラの極致
UNBELIEVABLE(Sparky remix)

Artist:jun feat.Sarah-Jane

BPM 88-175

【SP】習4 / 楽7 / 踊11 / 激15 / 鬼18

【DP】楽8 / 踊12 / 激16 / 鬼18

時は遡り2012年、バージョンX3vs2ndMIX…………

この楽曲はEXTRA STAGEのさらに先、ENCORE EXTRA STAGE専用楽曲として君臨しました。

たったの1ミスも許されない緊張感を背にして挑む、つまるところボス曲・ボス譜面!

 

当時ENCORE EXTRA STAGEへ進出するには『EXTRA専用楽曲のEXPERT譜面(※1)でスコア95万点以上を獲得』という条件があり、そしてEXTRA STAGEで挑める譜面カテゴリは「通常ステージでクリアした楽曲レベルの合計」によって決まるため(※2)それなりの力がないと挑戦権はありませんでした。狭き門ですね。

 

というわけで今回はバージョンX3vs2ndMIXにおいて最初にプレイヤーへ立ちはだかったアンコールエクストラ専用楽曲・UNBELIEVABLE (Sparky remix)(ESP15)の話をします。(※3)

※1…Amalgamation(ESP14)後に13へ降格
※2…通常ステージで選びクリアした楽曲レベルが「設定曲数×13+1」以上でないとEXPERT譜面が出現しない。3曲設定の場合、選んだレベルの合計値が40以上になる必要がある(例:レベル13を2曲、レベル14を1曲)詳細:BEMANIwiki
※3…厳密には海外版の家庭用DDRⅡが初出だけどいったん忘れてくれると助かる

jun

さて、近年DDRをはじめましたという方には馴染みのない名前かもしれませんが、本曲の作曲者であるjunについて少しばかり補足を。彼女はかつてサウンドディレクターとしても一時代を築いた、DDRの歴史に欠かせない主力コンポーザーのひとりです。


「PARANOiAの新作出すよ」の公約を果たした結果生み出された惨禍・PARANOiA~HADES~にはじまり、DP譜面だとなぜか足首捻挫配置に偏るアーティスト・TЁЯRAのボーカルでもあらせられるjun女史。彼女の楽曲・譜面の特徴として挙げられるのが、同レベル帯の中でもやや強めの局所難配置が散見されること。特にレベル15以上の楽曲はこれから話すUNBELIEVABLE(Sparky remix)も含め数多の場面でボス曲としての猛威をフルフル♪パーティーしており、超古参プレイヤーが稀に口にする「junはドS」のおおまかな由来というわけです。さすがにもう言ってる人いないのでは

ただ譜面制作者と楽曲製作者は基本的に異なるのがセオリー。つまり、けしてすべてが彼女の企みではありません。……とはいえ公式側も彼女が手掛けた楽曲の根強い人気はしっかりと把握している模様。まるでお前らがドMなんじゃいと言わんばかりに、今も10年越しの過去曲へ高難易度鬼譜面が追加されています。
 

翻弄・翻弄・レボリューション

配置の話をしましょう(本筋)

さあ張り切ってイントロから見ていきま……

ハイこの縦2連、いきなりスイッチ必須。

うっかり直後の→を左足で踏んじゃったら大変。これからアンコールに挑むぞって人がスイッチの構えなんかしてるわけない。さすがボス曲。バージョンX3はGOODがコンボにカウントされない最後の時代なので、下手すりゃここで終わりです。瞬殺。どう見ても運動神経がよさそうには見えない芸人が挑むSASUKEぐらいすぐ終わる。

そして歌い出し直後、一歩目から誘導のない逆足入り。容赦なくプレイヤーを弄んでいます。
メロディのパート分けがはっきりしているハピコア曲の特性が幸いし、覚えやすいっちゃ覚えやすいんですが………速度変化や停止ギミックに頼らず配置そのものから感じる「どうせ何回も挑むんだから覚えとけよ」の圧……うーん、圧!!踏んでるのはこっちなのにむしろ踏まれているような・・・ヒイ~~ッ!!ひれ伏しちゃう!!

このようにイントロからAメロというド序盤の時点でも入り足を惑わせる・微妙に交互難の配置があちらこちらに仕込まれているため、まったく気が抜けません。この譜面、力を抜くところはあれど、気を抜くところがない。

「いやここは気も抜いていいだろ」と思う配置があるとするならば、それは油断させた隙に獲物を仕留めるための布石です。

そしてBメロの最初。

26-29、ここは左足で↓フリーズを取って真横まで捻れば交互に踏めます。これが罠。

「なるほどこういうことね、真横に捻りゃいいんだこの譜面は」と追っていった先に現れるのは

30-32、先ほどと似たような真横捻り…と見せかけて、おい、回転配置じゃねえか。前半の交互配置は蜃気楼でしたとでも言うように、お前。

スライドでもコンボは繋がるのでそこまで苦労はしませんが、もしきれいな交互踏みを目指すとしたらスイッチをするにもなかなか咄嗟には動きづらい構成なので、機転を利かせてというよりはちょっと研究寄りでしょうか。そんな奇特な人は少ないでしょうが、完全交互主義(※特に定義せず適当に喋っています)ならサビに至るまでの8分がいちばん難しいんじゃないかと思います。

そんなこんなで、プレイヤーの足のみならず頭も惑わせてくる配置。交互に踏める気もするけどうっかりコンボを切ってしまいそう、さらには一歩のミスで即死という状況。もがけばもがくほど深みに嵌る流砂。


下手に捻ると間違えかねない。

「ならばスライドで正面向きを維持しよう」

という考えになってしまうプレイヤーがいても…おかしくないよね?


その先に待っているのは……

即死のロマン

急にブッ込まれる16分捻り!!

 

端的に言うならば、正しく捻らないと終わり

完全に密度で油断させておいてからのこれ、カッコよすぎる。

ここへ至るまで16分は最初に3連がちょこんと出てきただけなので、サビともなればある程度の難所が来る覚悟は出来ているにしても、こちとらさっき「スライドのほうがいいかも」とか頭によぎってたんだぞ。jun氏の殺る気まんまんソング。

 

まあまあ、慣れてるプレイヤーならこの16分もスライドで突破できるでしょうが……言い忘れてたけどアンコール曲ということで、ここではRISKY前提の話をしております。

この譜面、そしてこの配置は、1ミス即死込みのロマンなので………

 

『視覚難』というと「フリーズアローが混じり譜面の流れが一見わかりにくくなっている配置」をイメージしますが、この「8分で油断させているところへ急に16分発狂をブッ込む」のもある種の視覚難戦法だと思いませんか。いやフリーズ混じりの視覚難配置でもあるんですけどねこれ。ああ、なんて耽美なコンボカッターだろう。研ぎ澄まされた刃には戸惑う我々の瞳孔が映し出され、刹那、気がつけばSTAGE FAILED。もげた足をくっつけて再チャレンジだ!うわーん!

なんちゅうか、見せ場がわかりやすいんですよこの譜面。捻り発狂配置がしっかり見せ場。

フィギュアスケートでいう4回転ジャンプのポジション。曲のサビ=譜面のサビ。「なんか難しいのやって」と言われたとき、相手が別機種音ゲーマーなら(あ~ここが難所なんだな)と察せるぐらいにはわかりやすい。譜面に抑揚がある。つまり、踏んでいてテンションが上がる。​最高。

流れでそのまま言っちゃいますが

ベストオブロマン配置はここ。

44-45、3回目の16分ゾーン。直前の8分がちゃんと誘導しているのも良い。

足音のきれいなプレイヤーに踏んでほしいフットクラップASMR地帯。​リズムがめちゃくちゃ気持ちいい………

最後の16分17連は気合。素直に踏めるのですがこれで最後だという緊張感も押し寄せ、ここまで必死にコンボを繋いでいてもあっけなく死にかねない。相手が油断した隙を狙うのは戦闘の基本。

 

アンコールエクストラはいつでも崖っぷち。家に帰るまでが遠足。16分17連を踏み切るまでがアンビリ。フリーズで余韻を残して終わるところまで、余すところなく大好きです。

オートクチュールとプレタポルテ

個人の体感レベルの話ではあるんですが、A20あたりからレベル11(~13)帯でのアフロ踏み・真横捻り配置を含む譜面がかなり増えたなと感じております。

というより以前はもうすこし上級者向けの配置、いわば譜面の中でも難所として扱われていたのに、いつの間にかごく当たり前の配置として組み込まれるようになりましたよね。DDRの基本技能として恒常化した、というほうが近いかなあ。

いまレベル11付近でアフロ踏みや真横捻りを含む譜面って、たぶんどれから薦めようか迷うぐらい多いはず。良い譜面ばかりです。

良い譜面があふれる、良い時代になりました。

難所をガチガチに難所と認識して挑むと妙に力んでしまってうまくいかないという現象はあるもので、こうしたかつての難所をいかにも「このレベル帯ならこれぐらいは当たり前っす」みたいな顔で配置した譜面が増えるのは良いことです。

良いことなんですが、ただ……どれもなんだか、「よくできた優等生だな」と…。


アフロ踏み・真横捻り配置を自然体で克服できるよう、模範解答の枠からはみ出ることなくまとめあげている。けして悪くはない。

悪くはないが、無難。幅広く受け入れられるため磨き抜かれ、あらゆるエッジを取り除いた末に完成したプレタポルテのような譜面。

 

……確かに上質。あらゆる基準において、良い

断じてつまらないという意味のクソ譜面ではない。しかし言いようのない物足りなさを感じないだろうか? 優秀さゆえに個性を欠き、万人受けはすれど酔狂者はいない───そういうものってあるよね、何においても。


いや万人受けすること自体すごいんだって頭ではわかってるんですけどね。やっぱりゲームって楽しみたいじゃない。エンタメにはいつだって刺激を受けたいし、驚かされたい。間違って3個同時に配置してるとかSPとDPで24分ズレてるとかそういうのは勘弁してほしいけど、心のどこかで求めているのは一匙のイレギュラー。危うさだったり、ほっとけなさだったり、なんじゃこれクソワロタだったりするわけですよ。それがロマンなんですよォ……

そう、UNBELIEVABLE(Sparky remix)から感じるのは、オートクチュールの気高さそのもの。易しくはない、かといって挑戦者の心を挫くほど絶望的な壁でもない、あまりにも「レベル15」の「アンコールエクストラステージ専用楽曲」というポジションに相応しすぎた。

到達し乗り越えたときに思わず自分を手放しで褒めたくなる絶妙なラインの難しさ、これがサビの16分捻り配置の持つ大きな魅力。確実な理解と技能を要求しつつも快感を味わえるよう設計されている、そういう作られ方。少なくとも上記で述べたサビの配置は「捻らずジタバタして乗り切る」攻略法しかないプレイヤーはお断りで、交互踏みを疎かにしている奴は通さない、この配置を正しく見切れないのであればこの先に道はない、ぐらいの気概と思想を(勝手に)感じる。ただ闇雲に難しいだけでなく、多くの経験値が得られるすばらしい譜面だと思います。

独自の美しさと挑戦の精神で心を刺しにくるオートクチュール譜面。とにかく人を選ばず良質なものを提供するプレタポルテ譜面。

どちらもあらゆるプレイヤーにそれぞれのレベルで成長する機会を与えてくれる、TRICKYとSTANDARDの関係によく似ているではないか。これがきっとよく聞く多様性っちゅうやつなのだ。長らく遊んでいると曲のわりに無難な譜面へガッカリしてしまうこともあるかもしれませんが、習熟したプレイヤーにだけ寄り添われてもそれはそれでアレですしね。もし物足りなさに出会ってしまったときは「こりゃプレタポルテだね」と温かく見守っていきたいところです。

15フォルダに溶け込んで、今

プロレベルまで目線を上げると高難易度でも100万点近いスコアを叩き出すプレイヤーがわんさかいるので勘違いしそうになりますが、DDRはレベル15で95万点出せるぐらいでもけっこう上手い部類に入るはずなんですよね。上を見るとホント遠いのでそうは思えないけど、それでも。

 

今でこそレベル15なんてピンキリです。
えげつない譜面もたくさん増えました。
捻り特化の譜面も増えました。
DDRはきっとまだ続きます。

 

登場からはや10年以上、もはや通常ゲージで選曲できる今、この譜面はレベル15の中でもそこまで脅威ではないでしょう。同時配置も少ないしソフランも途中減速するだけだし低速は休憩地帯だしで、クリア目線ならむしろ親切な部類であり、相対的に易しい15という印象のほうが強いかもしれません。

ただ知っていてほしい。

この譜面が、かつて限られた者だけが辿り着けるステージに存在していたということを。
そして紛うことなきアンコールエクストラの極致であったということを。

 

いつも心躍らせながらフォルダを彷徨うあなた。

今宵はこちらの譜面なんていかがでしょう。
 

それではこのへんで。

 

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